読書感想文


夜凶街
菊地秀行著
幻冬社ノベルス
1999年7月10日第1刷
定価800円

 久々に「魔界刑事凍らせ屋」の屍刑四郎が主人公に。今回はあの吸血鬼、夜香とタッグを組んで、西洋から来た吸血魔人たちの集団を叩きつぶす。東洋系吸血鬼と西洋系吸血鬼の戦いという趣向も見どころの一つ。刑四郎も夜香も一度は敵を倒すのだが、復活の術をもつものが相手側にいて、苦戦の連続。それどころか、2名とも逆に一度は倒されてしまうのだ。
 本作でも、奇妙奇天烈摩訶不思議な妖術が飛び交い、「魔界都市新宿」世界の妖しさを十分に満喫できる。話のテンポが速く、その描写はいつものようにポイントを押さえつつも刈り込まれたものである。そのためつい読み飛ばしてしまう。そうすると肝心なところがわかりにくくなってしまう。しかし、じっくり読み込むと、その速いテンポを楽しむことができないから、読み方が難しい。
 ちょい役で医師メフィスト、せんべい屋秋せつらもゲスト出演する読者サービスが心憎い。今後も、こういった組み合わせの妙で「魔界都市新宿」世界が広がっていくとすると、楽しみなことである。あの「ぶう」という情報屋と巨体の魔女の組み合わせなんて凄まじそうだ。そういう組み合わせは作者の美意識に反するか。

(1999年7月6日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る