読書感想文


COOLDOWN
伊達将範著
メディアワークス 電撃文庫
1999年7月25日第1刷
定価610円

 夏休みの全校集会に集まった高校生たちを体育館に閉じこめたのは、香港から餌となる人間を集めにきた吸血鬼たちだった。さぼっていて難を逃れた主人公、氷室克樹は、わずかな武器で次から次へと現れる吸血鬼たちを倒さなければならない。休む間もなく繰り出されるピンチをいかにして切り抜けるかというところが見どころ。
 手に汗を握らせる展開というのだろうか、一気に読ませるだけの力はもった作家であるように感じられた。少なくとも読んでいるうちは作者のペースにうまく乗せられる。
 しかし、よく考えてみると、この設定はなんか変だ。どうして香港くんだりからわざわざ船に乗って日本で人さらいをする必要があるのだ。体育館をレーザーで包囲し、学校全体を爆破できる爆弾を仕掛け、運動場に地雷を埋める。わざわざそんな手間をかけて苦手な昼間に行動するというのに無理がある。夜中に寝ている人間をさらっていく方がよほど効率的だろう。
 妙な英語で会話をするのもひっかかる。いいかげんな英語なら、わざわざ使う必要はないように思う。おまけに、この吸血鬼たちは人種がバラバラなのだがたいてい「ジーザス・クライスト」と叫んだりする。英語の慣用句としては間違っておらないのだろうが、吸血鬼にこの言葉は違和感があった。
 良くも悪くもゲームの設定という感じがする。小説としてでなくゲームの原作として使った方がおさまりがいいように思った。

(1999年7月18日読了)


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