第6回ホワイトハート対象佳作受賞作。「開静のとき」を改題。デビュー作である。
新人にしては物語の運びがよく、ぎこちないところも多少あるが、なかなかの筆力。
平凡な高校生が、母の急死をきっかけに、実は自分が〈宇津保〉と呼ばれる神のよりましであることを知る。〈宇津保〉は過去には神の言葉を告げ鬼道衆という者たちを使っていたが、現在は立場が逆転し、鬼道衆の傀儡と化しているのだ。
主人公の菜樹もまた、鬼道衆たちに狙われ、捕まれば傀儡にされてしまう。彼女をかくまった寺の若い僧である海生は、からくり使い。親鸞以来、からくり使いは人形を使って〈宇津保〉を守ることを役割としてきた。菜樹をめぐり、鬼道衆とからくり使いの死闘が始まる。そして、菜樹は〈宇津保〉の本来の姿である、神のよりましとしての力を発揮しはじめる。
設定に、まつろわぬ民に関する歴史的背景が織り込まれているところから、網野善彦、あるいは隆慶一郎あたりの影響があるのかもしれない。歴史の影で社会を支えてきた民をしっかりした史観に基づいて描いているところなど、私の好み。だからといって小難しくなっていないのもよい。
おそらく続編が書かれるものと思われるが、そのような設定を生かし続けていってほしいものである。
(1999年7月25日読了)