文庫書き下ろし。といってもそんな気がしないのは、何度も同じ題材で書かれた作者の本を何冊も読んでいるからだろう。
それならなぜ読むか、といわれると、これはもう近藤節を楽しみたいからという他に理由がないのだ。以前も書いたけれど、近藤唯之の文章には独特の臭いがあって、それが鼻につく場合もあるけれど、読んでいて「待ってました」と声をかけたくなることが私には多い。
本書では現役の監督や過去の名監督を21人とりあげている。それぞれの監督の個性をこれでもかこれでもかと書き綴る。
以前テリー伊藤が「ダメ監督列伝」という本を書いていた。着想はいいが、エピソードなど自分で取材したものでないのでなにか迫ってくるものがなかったという記憶がある。近藤唯之にはぜひ「ダメ監督」と呼ばれる監督についても作者ならではの取材をもとにした本を書いてもらいたいものだ。本書でとりあげた監督は、何度も書いているのだから。
(1999年8月6日読了)