中学生、珠子のお祖父さんが15年ぶりに刑務所から家に帰ってきた。いじめ、校内暴力、地上げ屋などに淡々と立ち向かうお祖父さん。珠子は「グランパ」と呼んでお祖父さんといろいろな思い出を作っていく。
なんとも不思議な小説だ。読んでいる間は、するっとなめらかに小説世界に入ってしまう。山場もあり、それなりに面白いのだ。しかし、読後、どうにも手応えがない。つまらなかったわけではないのだ。しかし、筒井康隆の小説なのに、なんの仕掛けもなくものすごく素直にストーリーが進んでしまうというのは、どういうことだ。
主人公のお祖父さんのなんともいえない存在感だけは印象的なのだが。
こちらが筒井作品であると思って気負って読むと、肩すかしを食らってしまう。これは老俳優が自分のやってみたい役を小説に書いたという、そんな感じだ。そう、これを書いた筒井康隆は作家の筒井ではなく俳優の筒井なのだろう。
(1999年8月26日読了)