昭和50年代に新聞連載され、かつては文春文庫から出ていたものの復刊。
十返舎一九「東海道中膝栗毛」をもじり、弥次喜多ならぬ牙次さん与太さんが「時の六道」に迷い込み、現代の東京、邪馬台国(作中では邪馬壱国)、三蔵法師のお供、シンドバッド(作中ではシンダバード)の船など、時空を超えた旅をする。
「膝栗毛」の原典をみごとに応用し、徹底的に時代考証をし、当時の最新情報を生かした歴史への独自の解釈をとりいれ、該博な知識に裏打ちされたタイムトラベルを満喫できる。
作中のくすぐりなど、作者の笑いへのセンスを感じさせるが、珍道中という破天荒な感じはあまり受けない。戯作本の登場人物からみた異世界への驚きというところに力点が置かれているためだろう。むろん、それは間違いなくSFならではの面白さではあるのだ。
つまり、作者はとてもまじめにパロディに取り組んでしまっているということなのではないだろうか。そのきまじめさは好感の持てるものであるけれど。
ともあれ、牙次与太の道中は、まだまだ続く。結論は完結編を読んでからということで。
(1999年9月3日読了)