なにを今さらとお思いでしょうが、原稿関係で「旅」もののSFをあれこれと読み直しているので。
時の分岐点をたどる「道」を自動車で走る男レッドが主人公。彼は横道を探り、歴史に介入してみたりしている。そんな彼の命を狙う男が登場。かつての同僚チャドウィック。また、彼の行方を探すのは、彼の息子のランディとかつての相棒リーラたち。刺客を倒し、また味方につけながら続けた旅の終わりにレッドがであったものは……。
歴史改変が主題、というわけではないけれど、スパイスのように歴史上の人物が出てきてレッドの旅に関わり合う。本書の面白いところというと、「時」を「道」という具体的な形で表現し、自動車で走るというところだ。ここでは「時」は流れるものではないのだ。時間SFの持ち味を逆手にとった、技ありの設定といえるだろう。
そして、カットバックを多用した構成が効果的である。散らばった断片をまとめ直すと、意外なところに仕掛けがしてある。
具体的に描かれているものが実はいろいろなものを象徴するものになっていると考えれば、二重三重に楽しめるお得な小説といえるだろう。大傑作というわけではないけれど、読み方によっていろいろな味わい方のできる佳作だと思う。
これが「サンリオSF文庫」の廃刊以後、まだ一度も復刊されていないというのはもったいないことだ。
(1999年9月6日読了)