読書感想文


泰平ヨンの航星日記
スタニスワフ・レム著
深見弾訳
ハヤカワ文庫SF
1980年2月15日第1刷
定価500円

 旅ネタのSF小説ということで、古い本を読み返したりしている。
 今でいう「バカSF」である。SF版「ほら男爵の冒険」という初出時のうたい文句がぴったりくる。「泰平ヨン」なる宇宙の冒険家がいろいろな星で見聞したことや時間旅行をして体験したことなどを語るというスタイル。その設定や展開がSFでないと書けない大ボラになっているわけです。
 純粋にばかばかしいものもあれば、風刺的な意味合いの強いものもある。東欧SFの場合、冷戦時にはSFでないと表現できない風刺というものもあっただろう。その部分は今となっては古風というべきものではあるのだろうが、SFという形をとっているために普遍的なテーマというような感じになり意外に古びていないなという感じがした。
 大時代的な訳文が、かえって読みづらいけれど、これは多分に「ほら男爵」を意識しているからだろう。
 なんにせよ、こういうタイプの「バカSF」はいまどきあまりお目にかかれないという意味では、若いSFファンにもぜひ読んでほしい作品ではある。実は本書は品切れらしく、新刊書店では入手できないのだ。ここらあたりは復刊フェアでとりあげてほしいところだな。

(1999年9月18日読了)


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