「旅」のSFをあれこれ読み返している。
別荘に来なくなった主人になにかあったかとトースターをはじめとする家電製品たちが、主人の家に向かって旅をする。途上、様々な事件が起きて何度も旅を打ち切られそうになるが、いさましいちびのトースターの機転で難関を突破し、彼らはとうとう主人の家にたどり着くが……。
上質のSFメルヘン。古典的な冒険の旅を家電製品を主人公に置き換えて語り直すという秀逸なアイデアが、この佳作を生んだ。家電製品でなければなしえない冒険が実によく考え抜かれていて、楽しい。単純な話ながら、わさびのように含まれるアイロニーもまた格別。
できれば、中学生くらいにこういう物語に出会いたいものであるが、私が初めてこの話を読んだのはもう大学生になっていた。残念なことだ。
おっさんになってから読むと、家電製品たちの組み合わせの妙に感心するという、技巧的な面に注目して読んでしまう。いかんいかん。そういう読み方をしてはいかん。
(1999年9月23日読了)