1999年度ロマン大賞受賞作。作者はこれがデビュー作となる。
ギャルゲー製作の担当者とベテラン声優の娘という2人が主人公。この2人が「人気」に振り回されていく様子をコミカルに描く。
高校生毒島かれんは、母親が声をあてたギャルゲーが大当たりし、ゲームの主人公の影の主役を公開する際に、母に代わって顔見せをするはめに。そして2本目からは彼女自身が声をあてることになる。大人気ギャルゲーの声優で現役女子高生(しかも眼鏡っ娘!)ということで、かれんは超多忙に。仕掛け人であるゲーム開発担当者の神代美代子はマネージャーとしてかれん売り出しを押し進める。やがて、彼女の人気を利用してなにかを企む広告代理店の担当者の目論見が明らかになっていく。そこへ、エロゲーの主役の声をかれんがあてているのではないかという噂が流れ……。
ギャルゲー、声優、眼鏡っ娘とオタク心をくすぐる要素をぶちこみ、するするっと読めるようにまとめあげている。新人離れした力量であるとは思うが、この達者さはなんなんだろうと思う。おそらくこの作者は今後も新作を量産できるだろうと感じさせるし、どんなジャンルの小説もこなせるのではないかとも思う。反面、器用貧乏になってしまう危惧も秘めているように感じた。書くテーマをどれだけ絞りこめるかで、今後どのような存在になるかが決まっていくのではないだろうか。
(1999年10月9日読了)