読書感想文


リアルヘヴンへようこそ
牧野修著
廣済堂文庫 異形招待席
1999年10月15日第1刷
定価552円

 都心から離れた山村を切り開いて作られたニュータウンが舞台。コンピューターのサーバも備えた最新のマンションで、ネットにつないだものに謎のファイルが送られてくる。
 主人公の少年、瞬は転校してすぐでいじめにあっているが、町に住むホームレスたちと仲がよく、彼らに関するホームページも開設している。
 やがて、このマンションに奇怪な出来事が起こるようになる。その名からは精神に変調をきたし殺人鬼と化した瞬の父親もいる。彼は殺した猫や人を自在に操り殺人を重ねていくのだ。
 異変に対してこれを解決しようとする心霊研究家の寿来、そして瞬とホームレスの人々。彼らの奮闘もむなしく陸の孤島と化したニュータウンに惨劇が……。
 地縛霊が電話回線の中に呪いを残し、それがコンピューターのネットにのってサーバの中で増幅していくというアイデアや、超常現象を感知できるものとできないものの違いは、頭脳のOSにあたる部分の違いなののだというアイデアなど、独自の様々なアイデアを盛り込みながら、オカルト的な恐さとサイコ的な恐さを融合させようという試みがなされている。これはかなり成功していると思うのだが、文章ではどうしても作者の得意(?)なサイコ的な部分が目立ってしまうのはしかたないか。また、電脳を扱ったホラーとしても、プログラミングが原因で異変が起こるというものではないところに好感が持てる。
 いやしかし、読んでいる者の頭がおかしくなってしまいそうな言葉の操り方はさすがである。

(1998年10月11日読了)


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