まずは上巻を読んだところでの感想。
主人公は若い考古学者、葦原志津夫。縄文時代の土偶が見つかるが、それは当時の技術では考えられない高温で焼かれていた。いわゆるオーパーツだ。彼の父は失踪中のやはり考古学者。その居場所を彼に教えるといった大学の助教授は1600度を超えると思われる高温で焼死していた。それもなにもない山中で。
助教授の死と土偶との間に関係を見いだした志津夫は、その謎を解こうとし、父親を探しはじめる。そこに登場するのは雑誌記者を名乗るグラマー美人、真希(そういう表現があるのです)。非常に考古学にくわしい彼女は、志津夫に協力するとみせて、土偶を持ち去ってしまう。手がかりを求めて父の故郷に帰った志津夫は、そこで秘祭を目撃。自分の素性を確かめ、また強大な力を手に入れようと、彼は祭で使われた土偶に手を触れるが……。
謎の提示部としては、面白いのではないか。邪馬台国と日本書紀とのつながりを考えてみたり、「カムナビ」と呼ばれる天からの熱波の出し方など、アイデアにも見るべきものがある。
ただ、人物がいけない。別に深く人物像をえぐらなくてもよいが、キャラクターとして弱すぎたり描写がうまくなかったりで、作者が狙っているほどの効果が出ていない。主人公の頭の悪さには特にまいった。明白な事実を突きつけられても気がつかないでオロオロしてばかりいる。そういうキャラクターが本当に謎を解明できるのかという疑問さえ感じてしまった。グラマー美人にしても、色気があるように書いてはいるのだが、全然色気もなにも感じられず、どうして主人公がこんな女の色香に迷うのか戸惑ってしまう。ボーイッシュでいつも野球帽にジーンズというかっこうの女の子も主要な人物として登場するのだが、この女性もあまり魅力が感じられない。なのに、主人公はこの女性にも心を奪われたりするのだ。どんな趣味をしているのだ。
ここまでキャラクターを立てられないというのは、エンターテインメントとしてはかなり辛いものがある。下巻では謎の解決がなされるわけだが、このキャラクターで最後までもちこたえられるのか……。読んでみないとわからないわけだが。
(1999年10月11日読了)