読書感想文


蒼の堕天使
由麻角高介著(原案・中笈木六)
マイクロデザイン出版局 二次元ドリームノベルズ
1999年11月1日第1刷
定価890円

 主人公の鬼守龍那は幼時に、村落を襲った犯罪組織の暗殺部隊「13姉妹」の詩亜奈と詩亜夜という双子に、両親を惨殺される。その時に彼女の体に「鬼神」が宿り、後にその能力を用いて学園特武官の「夜叉姫」として戦うことになる。彼女の相棒は「蛇姫」こと朽縄雅。二人のチームに新たに加わった美少年、名無神桜狩は実は「13姉妹」の一人であったが裏切って学園特武官になったという秘密を持つ。龍那と桜狩は恋に落ちるが、桜狩は実は人工的に生み出されたクローン・アンドロイドで両性具有であった。彼を狙って現れた詩亜奈と詩亜夜。そして、桜狩の双子として生み出された那琉。
 詩亜奈と詩亜夜に捕らわれた龍那と桜狩は薬物を注入され衆人環視のもとで陵辱の限りを尽くされる。二人を助けに現れた雅だったが……。
 龍那たちのアクションシーンはなかなか読み応えがある。どんな手を使っても逃げ出せない龍那と桜狩への執拗な責めはサディスティックな興奮を呼び起こすように描かれていて、いわゆる18禁ヤングアダルト小説としてはそれなりの水準を保っていると思う。「組織」が単純な悪とは言い切れないところなども物語に興趣を添えている。
 それだけに、設定の中で新しい技術が偶然来訪した宇宙人からもたらされた、というところがいささか安直な印象を与えてしまい、残念だ。
 龍那に宿る「鬼神」と雅に宿る「蛇神」についての説明や「組織」の正体などまだまだ説明されていないところが多く、シリーズの続編でどのように明かされていくか、最終的な評価はその描き方次第だろう。

(1999年10月20日読了)


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