21世紀、野生動物の密猟組織から動物たちを守る写真家ミタ・エミの活躍を描いた近未来アクション小説。とはいえ、エミは獣(ピースト)ハンターと敵から怖れられる戦闘力を持つ。組織の開発した高性能ロボット、サイボーグ技術など小道具もうまくちりばめられている。自然保護を訴える説教臭さはないので、かえって好感が持てる。
この密猟組織もどうやら国際的な陰謀を受け持つ戦闘集団らしい。それに対して自然保護警察という組織があるのも面白い設定だ。
派手なアクションや野生生物への愛を描いた泣かせるエピソード、そして淡いロマンスなど、著者の読者を楽しませようとするサービス精神は相変わらずだ。やはり達者な人だと改めて感じた。
肩の凝らないアクション小説として十分楽しめる作品に仕上がっている。たた、ひっかかるのは随所に出てくるマンガ的な文体。ギャグを入れるときに使用されるのだが、活字で読んだ場合、あまり効果がないように感じられた。別に全編くそまじめに書く必要もないとは思うが、なんだかバランスが悪い。あまりギャグセンスはいい方ではないという感じだな。
テーマが重いだけに、全体のトーンの軽さが気にかかる。テーマの掘り下げ方などは、これからのこの作者の課題だろう。
(1999年10月22日読了)