私は基本的には上方落語のファンであったりするのだけれど、東京落語を聞かないわけではない。特にひいきの落語家がいないということもあるけど、最近CDで小三治の落語を聞くようになって、上方の落語家にはない味を楽しんでいる。
落語の前に聞き手を引きつけるためにするおしゃべりを「枕を振る」という。本書は小三治の独演会の録音からその「枕」だけを抜粋して採録したもの。
この小三治の「枕」はしゃべるエッセイみたいな味わいがある。録音で聞くと、そこらのおっさんがぼそぼそっとしゃべってるだけであるが、自分の好きなオーディオの話、バイクの話、塩の話、蜂蜜の話と実にマニアックな内容で、聞いているうちに感心させたり笑わせたり。いわゆる「スタンダップ・コミック」……「漫談」的なものではないところが実にユニーク。小三治の素のままの人間像が浮かび上がって、実に味わい深い。できればソニーから出ているCDも合わせて聞いた方がいいだろう。
(1999年10月30日読了)