「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「マイティジャック」「怪奇大作戦」と
円谷プロ初期の名作の企画全てに関わり数多くの傑作を書き続けた脚本家、金城哲夫。その円谷プロ時代から、沖縄への帰郷、そして早すぎた死を、同郷でやはりウルトラシリーズ、特に「帰ってきたウルトラマン」のメイン脚本家として人気のある著者が書き綴った鎮魂の書。交遊の記憶に金城自身の日記などを加えて、その人間像を明らかにしていく。
琉球と大和の架け橋となろうとしながらも、その矛盾に苦しんだ金城。大和の地にとどまって琉球を描こうとする著者。それぞれのスタンスの違いを明確にしながら、一人の男の生涯をたどりつつ、沖縄という土地、風土をも描き出した秀作である。
また、常に新しいものを産み続けなければならないクリエイターの生き方と、それを消費し尽くすTVというメディアについても深く掘り下げている。
それらが重層的に描き出される本書は、著者が金城に託して自らの真情を吐露した一冊であるといっていいだろう。
(1999年11月3日読了)