「西遊記」を異世界ファンタジーとしてとらえ直す試み。
元気で乱暴な三蔵法師は「果級妖怪」と呼ばれる化け物たちを退治する力をもっている。この「果級妖怪」が跳梁跋扈する状況を憂いた皇帝の命により、妖怪を根絶する経文を天竺まで取りにいくことになる。おともは人語を解する馬、玉龍のみ。しかし、道中で仙術を使う少年孫悟空、水を操る能力を持つ少年、沙陽藍、働き者で気のよい少年、猪詠睦らがおともに加わる。彼らはみな、かつて「果術」を操りそのために滅ぼされた幻の国、悟の出身なのである。三蔵もその本性は悟の王族であった。
地の文の語り口はTV「西遊記」の芥川隆行のそれを意識したものだし、タイトルはTV人形劇「飛べ! 孫悟空」のテーマソングから拝借したもの。対象読者である中高生の女の子はそんなことは知らないで読むんでしょうね。作者の「西遊記」へのオマージュということはいえると思う。原作がポピュラーなだけに、料理の仕方が難しいと思うが、まずは作者らしい軽妙なタッチに仕上がっている。キャラクターの立て方や舞台設定がユニークなだけに、今後の道中での妖怪たちと遭遇してからが勝負かもしれない。
道教の神様や仏教の仏様を一切出さないとこらあたりに作者の興味が現れていて面白い。道教の神様をいっぱい出したら「封神演義」ファンの女の子には受けるのではないかと思うが、そこまで意識はしてないんだろうな、きっと。
(1999年11月10日読了)