著者はタイトルが示すとおり、現役の狂言役者。狂言を家業とする家に生まれ、異流協演や新劇出演、他にもTVに出演したりと、古典芸能の世界にあっては、型破りな人である。というよりも、本書を読むと、茂山家自体が自由な気風を持っていて古典芸能を守るというよりも、いろいろなジャンルに挑戦することで狂言をよりよくしていこうという、攻めの姿勢をとっているのだということがわかる。
著者の半生を振り返ることが、即、戦後の大蔵流狂言の歩みをたどることにもなるのである。柔軟な家風があってこそ、狂言が現代に息づく芸能として見直されたりもしているのだろう。
家元制度への反発、権力への批判、それこそが狂言の持つエネルギーなのだろう。読んで楽しく、そして納得させられる一冊であった。
(1999年11月18日読了)