読書感想文


∀ガンダム 1.初動
佐藤茂著
矢立肇・富野由悠季原作
角川スニーカー文庫
1999年11月1日第1刷
定価381円

 過去に起こった大戦争が風化し、地球上の人類たちは文明を退行させてしまっていた。一方、月に移住した人類の子孫たちは文明を維持し続け、長い間戦いのないままに戦力を持ち続けている。月の人類は若者を地球に送り込み現地で暮らさせ、来るべき移住の日に備えている。
 主人公、ロランもそうやって月から送られてきた一人。彼は鉱山に勤め、地球での生活に慣れていく。そこへ、月から武装してきた先遣隊が侵入してくる……。
 TVアニメのノヴェライゼーションで、小説の担当はファンタジーノベル大賞出身の佐藤茂。そしてカバーと中扉絵は萩尾望都。原作であるアニメーションをいかに違ったイメージで活字展開していくかという、野心的な試みに驚かされた。オリジナル小説であってもおかしくはないものに仕上がっている。もっとも、アニメの方を見ていない私はそちらと比較することができなかったりするのだが。そういう者がノヴェライゼーションを読むかね。
 ともかく、原作アニメのアニメーターを使わないという試みには注目せねばなるまい。これまでもガンダムのノヴェライゼーションでは既存の作家を起用したりしてきた。それでもカバーはアニメのものを使用していたのだ。こういった方法が単に奇をてらったものになるのか、それとも今後のノヴェライゼーションのあり方に影響を与えるのか。注目したいところである。

(1999年11月19日読了)


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