読書感想文


霊人ジョニー
菊地秀行著
双葉社 フタバノベルズ
1999年11月25日第1刷
定価800円

 人に触れるだけでその相手の過去や未来まで知ることのできるというものすごい能力を持った男、ジョニーが主人公。彼のもとに、顔を盗まれたという人気歌手真弓が現れる。彼女の顔は実は他人のものを移植したものであったのだが、それを取り返されたのであった。奪われた顔をもとの持ち主に移植できるのはただ一人。「顔」をめぐる激しい攻防が繰り広げられる。
 ジョニーという主人公は、その万能ゆえに表に出ようとしたがらないという設定ではあるが、そこは菊地作品で、結局はかなり派手な活躍をすることになる。読ませどころは、同じ顔を持っても、その人品が相となって顕れてしまうというところか。
 どうしてもアクションやSEXをふんだんにサービスしてしまうので、主人公の心の空虚さや真弓の達観などが深みを持って読み手に迫らないうらみが残る。深めないところが作者の持ち味ではあるのだからしかたないとはいえ、せっかくの設定がもったいないように思った。

(1999年11月24日読了)


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