江戸時代が舞台。怪事件が起こり、妖怪の噂がたつところに必ず現れる人々がいる。御行の又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平、そして考物の百介。彼らの仕掛けにより、非道をなし妖異を怖れる者たちは自ら滅びの道を選び取っていく。
展開は「必殺シリーズ」と同種のもの。ただし、仕事人と違い暗殺するわけではない。妖異を演出して仕掛けた相手が自滅していくようにし向けるというところに特徴がある。
細かく練り上げられた仕掛けには凝った演出がなされていて、それがなかなか楽しい。ただ、ミステリ仕立てなのでせっかく途中までおどろおどろしくても結末では合理的解決でその雰囲気が一掃されてしまう。そのおどろおどろしさを最後まで楽しみたい者には物足りない気もする。
また、7編の短編が収録されているが、いろいろ工夫はしているけれども展開のパターンはどうしても決まってくるのでちょっと先読みしやすいのも食い足りなさを感じるところか。
妖怪小説と思ってこちらが期待していたものとはいささか趣が違っていたので、私としては残念。どうしてもこの作者のものにはそれがつきまとってしまうとはわかっていても、だ。
(1999年11月27日読了)