読書感想文


水仙の清姫
紗々亜璃須著
講談社X文庫ホワイトハート
1999年12月5日第1刷
定価550円

 第6回ホワイトハート大賞優秀賞受賞作。「鳥恋秘話」を加筆訂正、改題して上梓された作者のデビュー作である。
 中国の天界が舞台。西王母の末娘、太真は天真爛漫な性格。彼女の姉は才色兼備の仙女、華林。華林に恨みを持つ鳥人、翼宿は謎の妖女、麗紅にそそのかされて太真をさらう。しかし、あくまで無邪気な彼女に接し、すっかり毒気を抜かれてしまう。一方、華林は妹を救うために白虎を供に麗紅の根拠地に向かう。麗紅の隠された目的とは……。
 中国の神話世界を借りて書かれたラブコメディーと言い切ってしまうと、アクションシーンの面白さや持つ者持たざる者の関係などのテーマ性を切り捨ててしまうことになる。道具立てを現代の日本にしてもストーリーは成立するかもしれない。そこらあたりは本来の読者層である若い女性には取っつきやすかろう。
 ただ、なんとなく展開やキャラクター設定に古くささを感じてしまった。よくいえば少女小説の本道ということになるのかもしれないが。しかし、これだけしっかりした構成のものが書けるのだから、将来性は感じさせる。どこらあたりでステップアップするか、しばらく注目してみたい。

(1999年12月3日読了)


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