作曲家生活半世紀という著者による、音楽関係のエッセイ集。テーマがばらばらでまとまりがないので新聞連載でもまとめたのかと思ったけれど、そういう標記もないのでどうやら書き下ろしらしい。
子どもの声が低くなりユニセックス化しているということが書かれているかと思うと、絶対音感信仰の批判をし、お母さんコーラスが世界一だとほめあげ……。現代日本の音楽事情に関する警句集かと思うと現状肯定とも思えるようなことが書いてあったりする。あまり深く考察して書かれたという印象がない。顕著なのは、日本に洋楽が入ってきた経緯と、著者の一族がその流れの中で音楽一家を形成してきたということを描いた一章で、それが現代日本の音楽事情に何を残したかというようなことは一切書かれていない。これにはちょっと肩すかしを食らわされた気分。著者の言いたいことがなんなのか伝わってこないのだ。
唯一、幼稚園の保母さんへの音楽教育がなってないことを指摘した部分だけが説得力があった。これは、著者が現在幼稚園の園長をしているという、いわば現場から発せられた声だからだろう。
つまり、本書は、著者の実体験に基づくところにはいいものがあるが、著者が現在の音楽事情を見て感想を書いた部分は何かもっともらしいことを書こうとして失敗している、という感じなのだ。幼稚園の現場と作曲家としてのキャリアを中心にして書かれていれば、もっと芯の通った面白い本になったことだろう。私には期待はずれの一冊だった。
(1999年12月25日読了)