読書感想文


こんな「名盤」は、いらない!
クラシック恐怖の審判1
許光俊編著
青弓社
1999年12月30日第1刷
定価1600円

 クラシック音楽には同曲異演盤が山のようにあり、CD店のクラシックコーナーに行くと初心者はそれだけで何を買ってよいのか迷ってしまう。そのためにいろいろな評論家がそれぞれに「名盤」を選び、「これだけは聴くべし!」なんてやるわけだ。
 何年かに1度は投票によって「名盤」のランクづけが行われ、それをまとめた本も出ている。
 本書はそのような中で築かれた定評のある「名盤」に対し、複数の書き手が自分の耳で聞き頭で考え、出てきた疑問を細かく検討し、本当にそれらが「名盤」に値するのかを考えたもの。1枚のCDにも聴き手によって好みが分かれ、本書で語られている内容も全てが首肯できるわけではない。しかし、ここでの分析は鋭く一読に値する。
 ただし、これは、クラシックマニアが再度自分の耳を確かめるために読む本であり、何種類もの「名盤」をちゃんと聴いた上で読むべきものであろう。こういうこれまでの権威に対してはっきりと批判したものは、時として(著者たちの意に反して)熱狂的な追随者を生むおそれがある。
 本書で著者たちが意図しているのは、まず自分で考えて自分にとっての「名盤」を決めよということである。だから、実は本書に書かれていることに対してきちっと反論できるくらいに読者のレベルもあげていかなければならないと思う。そこまでできる人は別にこういう本など読む必要はないのだけれどね。
 要は評論家のいうことを鵜呑みにして自分で考えない聴き手が多いということなのだろう。そういう状況であるからこそ、本書には価値があるといえるだろう。

(1999年12月26日読了)


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