タイトルから、土地そのものにまつわる因縁について書かれた本かと思ったら……少し違った。特定の土地に建てられた建築物から、その土地にどのような因縁が発生していったかを豊富な事例をあげて解説したものである。例えば国会議事堂、広島の平和記念公園、瀬戸内海の生口島といった場所である。また、明治天皇行幸のあとに建てられた記念碑がその土地を聖地に変えていった例、国会議事堂の屋根の形状が伊藤博文の銅像台座と同じものであるところから国会そのものが常に伊藤を思い起こさせるものになっているなど、興味深い考察がなされている。
西洋と日本の建築思想の違いなど、教えられることが多く、当初期待していた内容とはかなり違ってはいたものの、近代日本の成り立ちを建築という視点からとらえ直したユニークな本として面白く読めた。
(2000年1月5日読了)