第6回日本ホラー小説大賞受賞作を含む短編集。
大賞受賞の表題作は、岡山の女郎が寝物語に客に語る自らの半生という形をとり、貧しい農村で生きながら地獄にいるような育ち方をした女性の、生死に対する歪んだ感性を巧みに描いた傑作。方言の効果的な使い方など、その技巧面の凄さにも舌を巻いた。
他に書き下ろし短編が3本。コレラ患者を探す仕事を押しつけられた小役人がふと魅入られた魔性の女とそれに対比するような平凡な妻の隠された魔性を描く「密告函」。漁村に嫁に来た酌婦の悲劇「あまぞわい」。狂女から生まれた兄妹にふりかかる過酷な運命をたどる「依って件の如し」。
いずれも地方の寒村の閉鎖的な環境が生み出す「怪談」を巧みな構成と語り口で示し、人間の持つ闇の部分をえぐり出している。「業」としかいいようのないものがそれぞれの短編にはじっくりと、これでもかこれでもかと書き込まれている。共同体の枠に投げ込まれる異物への恐怖とでもいうのだろうか。
いわゆる「ホラー小説」というよりも社会派の「怪談」というように感じた。文句なしにお薦めの傑作であります。
(2000年1月7日読了)