読書感想文


アスカの使徒たち−消えた十部族の謎−
武上純希著
朝日ソノラマ文庫
1999年12月31日第1刷
定価490円

 青森の寒村を襲うUFOの前に、村は全滅。辛うじて赤ん坊が一人、川に流されて生き延びる。それから十数年後、大学生、神智明はその滅びた戸古村に伝わるキリストの墓を訪ねる。そこで彼は女性ジャーナリスト、天翔七穂と出会い古代ユダヤ人と世界各地の遺跡との関係や、「使徒」と名乗る者がその謎を探る者たちを次々と殺していることを知る。
 大学の「アスカ研究会」というサークルに呼び出された明は、澤田天という青年から「使徒」の目的について聞かされる。澤田たちと「使徒」の戦いに巻き込まれた明であったが、その戦いが自分を中心に引き起こされていることを知る。真相を知った明のとった行動は……。
 日ユ同祖論や竹内文書など、いわゆるトンデモ本に書かれている超古代文明説を下敷きに書かれたアクション小説。とはいえ、アクション部分の面白さよりも超古代文明説の説明が強調されているので、小説としての流れはあまりよいとはいえない。説明部分のもっともらしさはフィクションとしては面白いのだが。物語の流れの悪さに加えて終盤かなり書き急いで話をはしょっているので、クライマックスでの盛り上がりがなくなってしまっている。未消化なまま放り出されたという感じなのだ。もっと枚数を費やして書き込まなければ、このままでは結末が唐突すぎてなにがなんだかさっぱりわからない。
 脚本家や作家としてのキャリアも十分ある作者だけに、こう不完全なまま出版したということが私には理解できなかった。

(2000年1月11日読了)


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