元日本コロムビア社のレコード・ディレクターとして、数多くのアニソンのヒット作を出してきた著者が、ヒット曲のエピソードを中心として、アニソン製作現場の裏話や、アニソン歌手の育て方などについて綴ったもの。アニソン歌手発掘のエピソードや、アニソンの地位の変化など、現場にいた人にしか語れない内容が満載されていて、音楽方面からアニメを見た本が意外に少なかっただけに、貴重な出版であると思う。そういう意味で、本書を企画した編集者にも敬意を表したい。
その価値を高く評価した上で、若干不満があるのも事実。ヒット曲を中心に書かれているだけに、いささか自画自賛のきらいがなくはない。具体的な例をいくつかあげる。実績として「レオのうた」でそれまでソノシート中心であったまんが主題歌のレコード発行の道を開いたとしているが、コロムビア発売の「レオのうた」は放送されたものとは歌詞が違う。その理由も書いてほしかった。また、人気アニメの主題歌を他社(特にキングレコード)と奪い合いをしたこともあったのではないかと推察されるけれど、他社との関係についてはほとんど触れていない。なぜコロムビアは他社のCDとライセンス契約を結んで音源提供をしないのか、他社からの音源提供を受けないのか、きっと深い理由があるに違いないが、それらについても書いてほしかった。失敗した例もとりあげてそのエピソードも書いてほしかった。携帯着メロの付録なんかいらない。もっと資料面を充実させてほしかった。
個人的にはこのような不満もあるが、これらをカバーした続編の刊行が待たれるところだ。
このような企画の出版が本書に続いてどんどん出てくることを期待したい。
(2000年1月13日読了)