父親が死んだ高校生の女の子を主人公に、その不思議な葬儀を描いた表題作は、第6回日本ホラー大賞短編賞佳作受賞作品。他に書き下ろし短編が4編。
ホテルに起こる怪異をコミカルに描いた「ホテルクレセントの怪談」。バイト先の仕事仲間の女の子ががゾンビとなって男の家を訪問してくる「12月のゾンビ」。恋人を殺した男が尼寺にたどり着き、庵主の奇怪な話に引き込まれる「萩の寺」。原発事故の結果滅び行く世界を乾いたタッチで描く「心地よくざわめくところ」。いずれもホラー小説の道具立てを使い、あっけらかんとした感じのタッチで日常生活のような調子で奇妙な世界を描く。そういう意味ではそれなりに才気を感じはするが、いかんせんテーマの出し方がストレートすぎて技巧的に不十分なところが気になった。ホラーを書くにはもう一つ屈折が足りないというのか。
ホラーと称しながらあまり恐がらせようとしていないような気もするが、ホラーな状況をあえてこのようなタッチで書くから恐いといえなくもない。その割にはあまりその効果はあがってないように思うが。
なんにせよ、ホラー小説一本でいくにはこの作者の資質ではちょっと厳しいかもしれない。乾いた笑いのコメディを書いていくといいかも、という気はするが。
(2000年1月15日読了)