新シリーズの第1巻。
鎌倉幕府成立直後、源頼朝をめぐって怪異が起こる。これを鎮めに登場するのが陰陽師の鬼一法眼こと龍水。二郎真君を式神に使い美貌の白拍子たちを配下に従えた彼は、幕府をたたる怨霊、牛若丸らと虚々実々の駆け引きをする。
本巻はシリーズ開始ということもあって、顔見せみたいな感じもするけれど、鎌倉時代が平安時代と完全に切り離されていたわけではないという当たり前のことをしっかりとらえているところが面白い。なかなかユニークな時代伝奇小説が始まったと思う。
牛若丸が怨霊として記録された例はないと思うし、だいたい武士の政権では怨霊そのものが成立しにくい。そこを作者は牛若丸伝説に独自の解釈を加えてうまく悪霊に仕立て上げてみせた。
主人公の鬼一法眼のキャラクターがもう一つはっきりしないところなどが現時点では気になるが、呪法などに無知だが霊気を感じ取れる下級武士の村上兵衛を狂言まわしに仕立てることによって、今のところカバーしている感じかな。シリーズが続いていくと、キャラクターも確立されていくだろうけれど。
鎌倉初期の人間関係をうまく利用しているので、本格的な呪詛が始まる次巻以降が楽しみだ。
(2000年1月26日読了)