大企業を辞めた48歳の男性、中堅企業を嫌がらせのような形で辞めざるを得なくなった31歳の女性、大阪から飛び出してきてアルバイトで食いつなぐ23歳の男性。素性も発想も違う3人が、職探しの過程で出会い、何度か会って話をしていくうちに互いの考え方に興味を示し、ついには3人で会社を始めるに至る。
「38万人の仰天」以来、サラリーマンを主人公にした作品を書き続けてきた作者が、リストラという極めて現代的なテーマを扱い、バイタリティあふれる人間群像をユーモラスに描く。あとがきによると主人公たちにはそれぞれモデルがいるということであるが、この不景気の世に、それにめげない人々を主人公にした元気の出る小説を書こうという、まあそういうことだろう。
こういった気軽に楽しめるサラリーマン小説というとかつては源氏鶏太という大家がいたわけだが、作者の書くサラリーマン小説は、かなり性格は違うものの方向性としてはその衣鉢を継ぐものではないだろうか。経済小説、金融小説の書き手は多いが、作者はうまく無人となっていたポジションに着地したという感じである。「平成の源氏鶏太」として安定したポジションに着くのはそれはそれでよいのだけれど、もっともっとかつてのようなシュールな味わいの短編を連発してほしいという気もする。まあ、時代が時代だけにそれでは作家としてはたちゆかないのかもしれませんが。
(2000年2月11日読了)