大正末から昭和初めが舞台。帝大で教鞭をとるかたわら幻想小説を書く鷹司惟顕と、かつての学友で弁護士の倉橋千歳の二人が、行く先々で怪異に出会う。それは、蔵の中で自殺した若い女性の魂魄であったり、吉野山中に住まいする物の怪であったりする。彼らはそれらに出会いながらもそれを祓ったりはせずにただ逃げまどうばかりである。
展開がストレートすぎて、せっかくの山場を逃しているという印象を受ける。アイデアにもうひとひねりあれば、設定や素材は面白くなる要素を持っているだけに、もったいない。どうも作者は設定を作り上げた時点で満足してしまってるのではないか、というような気がしてしまう。
つまり本書は、時代の雰囲気や怪異の様子だけを味わうだけ、というところにとどまっているのだ。今市子の表紙や挿絵がいい雰囲気を作り出しているだけに、残念である。。
(2000年2月13日読了)