副題の「お気楽極楽入門書」に騙されてはいけない。本書はそんな気軽なクラシック音楽入門書ではないのだ。
チャイコフスキー「ロメオとジュリエット」、モーツアルト「ピアノ・ソナタ15番」、ベートーヴェン「交響曲第9番」の3曲をまず徹底的に分析して解説する。これにより、クラシック音楽の形式から思想までが懇切丁寧に教授されるのである。二元論、弁証法などの西欧的な思考を音として具現化したものだと、著者は説くのだ。そして、そうした音楽はブルックナーによって完成され、現在ではそういう意味での「クラシック」は滅びたと公言してはばからない。
それは、極論であるとはいえ、読者に本質的なところを理解したように感じさせるところがなかなか凄い。
名曲のタイトルを書き並べて推薦CDを紹介するだけで良しとするような、そんな「お気楽」な入門書とは違うのである。ただ、これからクラシックを聴こうかという人は本書を読むとかえっておびえてしまって聴くのをやめてしまうかもしれない。クラシックをあれこれと聴き始めたくらいの人や自分ではクラシックを理解しているつもりでいるような人(私みたいな人)には実にためになるのではないだろうか。
非常に刺激的で面白いクラシック論である。
(2000年2月20日読了)