第6回電撃ゲーム小説大賞金賞受賞作。
特殊遺伝子保持生物〈怪〉が跳梁跋扈する世界が舞台。それらをとらえるために設けられた警視庁第6課に属する少女、片倉優樹は、その銀髪から〈白髪頭〉と呼ばれ、やはり〈怪〉をとらえる特殊部隊〈EAT〉の者からも忌避されている。彼女は〈怪〉と人間の混血児で〈ダブルブリッド〉と呼ばれる存在であった。かつて彼女と戦いとらえられた〈ダブルブリッド〉の殺人鬼、高橋幸児が出現、復讐のため彼女の命を狙う。優樹の部下として配属された若き警官山崎は、最初は彼女を冷たい目で見ていたが、ともに戦ううちに次第に心を開いていく。
テンポのよい展開、異物であるために体制に囲われつつもスポイルされている主人公とそれを理解しようとする青年の愛情、自分のふがいなさを他人への憎悪へ転嫁する男の心情などが見どころ。
ただし優樹の母親がなぜ〈怪〉と交わって〈ハイブリッド〉を産んだのかは本書には書かれていない。全体のテンポを損なってしまうかもしれないが、その点を描いていけば優樹の孤独感と母親の受けたであろう迫害などをシンクロさせることもできて、より奥深い哀しみを感じさせることができただろうに。さらに、〈怪〉が政府中枢に食い込み優樹を保護する役割を果たしているという設定が、かえって優樹の存在から切迫感を奪っているように感じられた。
権力の冷酷さを描こうとしているのはわかるが、その権力のとらえ方が一面的であるように思われる。
新人としては文章や構成は達者なので、今後も安定した活躍を期待できる。ただ、新人賞に応募するのにシリーズ化を意識して張った伏線をそのままにしているのはいかがなものか。その設定以外のものを書く気がないというわけではないだろうが、私としてはそれでは作家としての力量を計りきれないように思うのだ。それで受賞し、今後もシリーズとして出していく編集部の意図はわからなくはないのだが。
(2000年2月23日読了)