若い女性を相手に昔のことを語るという形で、頑固爺さんが持論を展開する。少々極端な例えや決めつけなどもあるが、ズバズバと語り込む内容には深い知識の裏付けがあり、小気味よさを感じさせる。
漢文の読み書きは明治で終わり、大正デモクラシーが日本文化を変えた。戦前は決して暗い時代ではなく、現代にある物の原型の多くが昭和初期には既にあった。などなど、示唆に富む部分が多い。
現代社会への斬り込み方はどうしても紋切り型になってしまう。その欠点を若い女性が受け答えする形で補っているのはうまい。
良きにつけ悪しきにつけ、著者独特の毒舌が冴え渡っている。「戦前」について知らない世代が主流を占める今、このような形の証言が残されるのは貴重である。もっとも、この毒舌に乗せられて全てを鵜呑みにしてしまいそうな危険性もあるので、そこは心して読みたいところだ。
(2000年2月24日読了)