第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門最優秀賞受賞作。
武装ボディーガード開店休業中の俺のところに転がり込んできた依頼人は、少女ハッカー、ウィスカ。彼女が開発中のソフトを狙う男2人に、俺までつけ狙われるはめに。実はソフトを狙っていたのは大アミューズメントパーク企業だった。ウィスカは王社長と取引をすることに決めるが、これを不満に思う2人の男は、警備人という仕事の範囲を忘れたように俺とウィスカを殺そうとする。
おかしいな、と思ったのは、「俺」とウィスカがなぜこうも執拗に狙い続けられなければならないのか、ということ。実はメタフィクション的な構成になっていて、結末でその理由がなんとか説明がつくようになっている。しかし、メタフィクションと呼ぶには、その仕掛けが冒頭と末尾の1ページずつだけで、作中にそれを匂わせるような鍵はない。だから、あ、やられた、というよりも、それはないでしョという感じになってしまうのだ。いわば夢オチのバリエーション。
細部の書き込みの濃密なところや、ガンやコンピューターに関する知識の豊富さには感心した。だから、そこに絞って「ヴァレリア・ファイル」(谷甲州)のようなタイプの作品を書き続けていけば、独自の存在感をもつ作家に成長する可能性を秘めた新人だろう。現時点では未知数の部分が多いけれど。
(2000年2月25日読了)