19世紀末のイギリスが舞台。ジプシー出身で超能力を持つが故に迫害された占い師の女性、クーデルカが主人公。彼女はこそ泥から奪った装飾品に込められた亡霊の声に導かれ、ウェルズ地方にある古い修道院跡へ。冒険と刺激を求める青年、エドワードや秘法を記した書物を探してやってきたオハラティー神父とともに、城を守る管理人夫婦、財宝狙いの盗賊、様々な恨みを残して亡くなった亡霊たちなどと戦う。死者再生の秘法を行った祭壇にたどり着いた彼女の前に待ち受けていたものは……。
迫害され、流れ者となってたくましく生きてきたはずの主人公が、坊ちゃん育ちの青年に減らず口を叩かれ、そこでぶち切れて泣いたりすると、なんかがっかりする。もっとしたたかな魅力みたいなものがほしいのだ。彼女が迫害されてきた哀しみももう一つこちらの胸に迫ってくるものがなかった。秘法の残虐さもしかり。恐ろしさがこちらの心に届いてこない。ただ血を流して人を殺すだけではぞっとするところまでいかないのだ。
つまり、本書は選択肢のないゲームブックみたいなものではないか。いくつかの障害がダンジョンの中で待ち受け、それを突破することでゴールに向かうためのヒントを得る。だから、ゴールにたどり着いたとき、亡霊を救い昇天するのは主人公ではなく同行者なのだ。
ガジェットは揃っている。しかし、このような構成のためにそのガジェットをうまく生かし切ることができなかった。そのように感じたのである。
(2000年2月26日読了)