読書感想文


若草野球部狂想曲 サブマリンガール
一色銀河著
メディアワークス電撃文庫
2000年2月25日第1刷
定価570円

 第6回電撃ゲーム小説大賞銀賞受賞作品
 関東の野球名門校で甲子園に出場し、スターとなった西宮光児は、ある理由から神戸の若草学園に転校する。そこの野球部は人数が集まらず女子選手がレギュラーの一角を占める弱小チーム。実績のない部活は廃止させようとする理事長は、若草野球部と甲子園優勝校との練習試合を組み、負けたら廃部させることにする。光児はアンダースローの真由美の素質を見抜き、特訓を始める。はたして若草野球部は練習試合に勝つことができるのか。
 漫画のコマを文字に移したような文章や、笑えないギャグと、本来私の好まないタイプの「コメディ」なのだ。しかし、本書はその点には目をつむろう。
 とにかく、本格的な野球小説なのである。野球のセオリーをきっちりと押さえた上で、臨場感あふれるプレー描写がなされている。だから、弱小野球部と強豪チームとの試合経過にも説得力がある。野球というスポーツの面白さを知り尽くしていないと、こうは書けない。
 だから、つまらないギャグを飛ばすのはやめてもっともっと本格的な野球小説にしてほしい。この作者がこのまま野球小説を書き続けてくれれば、いつか、あの名作「監督」(海老沢泰久)に匹敵するようなものを書く可能性を秘めている。今は無理としても、いずれ書いてくれるものと将来に期待したい。

(2000年2月26日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る