読書感想文


「弱者」とはだれか
小浜逸郎著
PHP新書
1999年8月4日第1刷
2000年1月7日第7刷
定価657円

 差別問題に言及するときに、我々があるときは気後れし、ある時は腫れ物に触るようになってしまう、そのような状況に置かれてしまう理由は何か。著者はそれを「弱者」の定義を問い直すことにより明らかにしようとする。そして、その上で我々が心がけておくべき指針を示す。
 「子ども」「老人」「在日外国人」「障害者」「部落」などのキーワードでひとくくりにされる「弱者」の聖化を戒め、個人個人が社会的に置かれている立場を一つ一つ見つめ直し、相対的な視点から「弱者」を見極めるべきだという視点に注目すべきだろう。
 いわゆる「放送禁止用語」などは、言葉そのものの持つ意味よりもその言葉が使用される環境を重視し、言葉と言葉の関係性を主体として考えるべきだとした上で、「言葉狩り」に対して、また、わざと差別的な言辞をひけらかすことに対しても、同時に批判を加えている。
 「弱者」とは、「差別」とは、「人権」とは……。多様化しているかに見えて画一的なものの見方が横行する現代に、大きな問題を投げかける好著である。

(2000年2月27日読了)


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