12枚の〈骨牌〉というカードを使う占い師の少女、アトリは、ロナーと名乗る若者と出会う。彼との出会いはアトリの運命を変える。彼女の住む世界は〈詞〉を紡ぐことによってその平衡を維持する王国が支配をしている。その平衡を崩すために現れたのが〈詞〉にはない言葉を語る〈異言〉という闇の世界の住人。王を守る12人の〈骨牌〉のうちの何名かは〈異言の王〉を奉じ、王国を崩壊させようとする。
幻の13枚目の〈骨牌〉を身に受けたアトリをめぐり、国王の弟であるロナーたちと、〈異言〉たちを操る反逆した〈骨牌〉たちの戦いが始まる。強大な力をもつ反逆者たちは王国を危機に追い込む。反逆者たちのもとに捕らわれたアトリがこの戦いで果たすべき役割とは……。
これは、破壊と創造の物語である。また、王権というものの価値観が変革していく様子を描いた革命の書である。一見、運命に翻弄されていると見える少女が、実は世界の運命を握っているという設定はままあるが、物語の進行とともに成長していく少女の姿は、自立する人間の成長過程を描き、被支配層が主権を勝ち得ていく過程を思わせる。
ファンタジー特有の予定調和的な結末を導いていくために、終盤の展開はやや強引かとも感じられたが、登場人物や世界が綿密に書き込まれているので、読み応えがあった。
うわべの言葉にとらわれないで真実の言葉で語るべきだというテーマが貫かれた力作である。
(2000年2月29日読了)