読書感想文


参上!まじかる☆じゃっく
上原菜乃子著
角川ティーンズルビー文庫
2000年3月1日第1刷
定価419円

 第7回小説ASUKA新人賞佳作作品を含むデビュー第1冊。
 舞台は明治時代。「帝都新聞」の道楽社長、結城とその居候3人組が主人公。菊池蘭太郎、青蓮、明椿の3人は、実は22世紀の人間。時空事故で明治の東京に漂着したのである。結城は彼らを「まじかる☆じゃっく」と名付けて事件を解決させ「帝都新聞」の看板にしようともくろむ。彼らのブレーンには、時空の歪みで江戸時代からやってきた平賀源内がいる。
 現代の読者を対象にしているからといって「うざい」などという言葉を平気で明治時代の人間にしゃべらせるのはいかがなものか。明治を舞台にとりながら、その時代の空気というものが感じられない。細部を書き込んで雰囲気を出すというほどのこともなく、22世紀人ならではの能力を見せつけるという場面も少ない。そんなに離れた時代に生きながらカルチャーギャップに悩むでもない。
 せっかくの設定を生かし切れていないという印象が残った。明治時代を舞台にとっていることや22世紀の人間を出すことにあまり(小説の上での)必然性を感じられないのだ。デビュー作ということを割り引いても、ちょっと苦しい。

(2000年3月2日読了)


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