作者は「小説ASUKA」出身で、本書はそのデビュー作。
霊を見ることのできる「見鬼」能力のある一橋亮也は、学校の教室で級友たちの足下をつかみにくる手を見る。一見女の子のような美少年の転校生、水城和彦が現れ、亮也の友人に強引になってしまう。水城は実は霊能者で、級友の女の子、間宮の依頼で霊を払いに来たのだ。「見鬼」能力のため親からも疎んじられ、自分を抑え込んでいた亮也は、野放図な水城にいつしか心を開いていく。水城とともに追いつめた霊の正体は……。
超能力者が、その能力故に疎外される孤独感、というテーマは、SFではかつてよく書かれていたもので、本書はそれをオカルト的に展開したもの。登場人物のキャラクター造形も含めて、うまくまとまっている。
本書で面白かったところは、女生徒同士の陰湿な友人関係の部分。嫌われたくない、支配したいという心理をかなり露骨に描いていて、読んでいて不快になるほど。その不快感が強いからこそ成立する話だろう。
作中での水城のセリフに「幽霊よりも生きた人間の方が恐ろしい」という意味のものがあるが、本書のテーマはそこにあるのだ。コメディ・タッチで描いてあるが、実はけっこうシビアな問題を扱っている作品である。
(2000年3月9日読了)