読書感想文


並列バイオ
秋口ぎぐる著
富士見ファンタジア文庫
2000年1月25日第1刷
定価620円

 機械文明が衰退した未来世界が舞台。変異した生物、巨人を動力とした〈巨人機関〉や計算能力の高い生物〈MS〉などが用いられている。これらを管理する〈学会〉に不穏な動きが。重要なポジションから外された技術者、ブレイロックは巨人が暴走した船で、とらわれの身となっていた少女ヒオリと出会い、これを助けようとする。〈学会〉と対立する〈進化論者〉たちは、突然変異で超能力を身につけた集団。ヒオリをめぐり、両者が激しい争奪戦を繰り広げる。ヒオリの血液や能力が双方に必要なのである。ヒオリに惹かれるブレイロックは、彼女を邪悪な計画から救い出し、計画自体をも阻止しようとする。
 一部の機械にかわり生物たちを動力機関や計算機として使用しているという未来社会の設定はなかなか面白い。SFならではの設定ではあるが、そんな社会がもたらされた原因や変異種が発生した理由などの書き込みが不足しているのが残念。シリーズ化できるような終わり方をしているので、続編以降でそこらあたりをきっちりと解明していってくれることを期待する。
 気になるのは、文章。「てにおは」などの助詞や読点を「=」や「/」といった符号で表記していたり、地の文が脚本のト書きのようにしていたりする。これらの効果で独特の雰囲気を作りだしてはいるのだが、私としては実に読みづらかった。こういう一般的でない表記はともすれば奇をてらっただけに終わってしまうものであると思う。達意の文章とは何かという「小説」や「文章」に対する感覚が違うのだろう。私には辛抱できない。こういう表記を「新しい感覚」などと持ち上げるものもいるのだろうが。

(2000年3月16日読了)


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