朝日新聞大阪版夕刊に連載の身の上相談を収録。
著者はバツイチ短歌詠みの目医者さん。まっとうな相談から何を考えておるかという質問にまで非常に律儀に答えていらっしゃる。律儀に答えていらっしゃる証拠に解答の始めに古今東西の文学作品からの一節を必ず引用しておられる。ちゃんと悩みに呼応した引用なんである。ふざけていいかげんにごまかしたりはしてないで、ちゃんとアドバイスもしているのである。
しかし、著者の人柄であろうか、非常にペーソスとユーモアに満ちた内容なのだ。自然体、といっていいだろう。帯には「役には立たんが毒にも薬にもならぬ」と書かれている。確かにその通りかもしれない。ちゃんとアドバイスしてるのに、役に立たんというのは、これは実にすごいことなのである。
新聞の方には森元暢之画伯のヨレヨレ線の実に味わいのある漫画が毎回ついているのであるが、本書には2つしか収録されていない。おおいに不満である。これは読者のトホホ投稿と著者のトホホ解答と漫画家のヨレヨレ漫画が揃ってこそ面白いのである。いや、漫画がなくても面白いけれど、あった方が断然面白いのである。三位一体なのである。
そういう欠点もあるけれど、とにかく不思議な魅力に満ちた文章である。投稿への解答として必ず短歌が添えられていて、これがまた味があっていいのである。いわゆる名文というのとは少し違うが、読めば読むほど味があって、奥深くていいのである。
だまされたと思って読みなはれ。
(2000年3月24日読了)