大阪ではテレビなどで何本もレギュラー番組をもち、上岡龍太郎や桂ざこば、円広志に一歩も引かぬ弁舌をふるう著者が、男性タレントに力で押されてしまう悔しさをバネに上野千鶴子のゼミに参加させてもらい、議論の仕方を身につけていく。
芸能界と東大のゼミという異質な世界の差に戸惑いながらも、最初は文献も読めずゼミ発表では容赦なく上野千鶴子に責められ、何度もくじけそうになる。しかし、著者は次第に文献の内容も少しずつ理解できるようになり、学問の場における議論の方法を体得していく。
本書は、春休みのレポートとして書かれたものだというが、おそらく上野千鶴子は著者の成長ぶりを見て、それを飾らない言葉で書かせることにより、学問の素人から見たフェミニズムを世間一般にアピールできると考えたのではないだろうか。
刺激的なタイトルも、著者のストレートな筆致も、十分にその役割を果たしていると思う。芸能界と東大の比較などから具体的なアカデミズム批判も出てくるが、半分学問の世界に踏み込んだ著者のスタンスは少し学会には甘くなっているようにも感じられた。それも上野千鶴子の計算通り、というような気がしてくるから恐い。
著者がまとめた「ケンカのしかた・十箇条」は、ゼミでの議論では有効かもしれないけれど、実社会でこれをやると相手は感情的になり、学問の世界ではそれは負けになっても実社会ではそうとも限らない。
そこらあたりのさじ加減を心得てなおかつケンカに勝てるのは上野千鶴子くらいのキャリアが必要であるだろう。だから、ケンカの仕方を学んだ本というよりも、「知」に飢えた一人の女性が「知」のなんたるかを身につけていく過程を追体験できるユニークなレポート、という感じで読むと楽しいのである。
(2000年3月27日読了)