新シリーズの開幕。
第1次世界大戦直前のウィーンが舞台。両親の反対を押しきり家出をしてウィーンにやってきたフランツは、音楽家志望の青年。人気のある楽団に入団できたのはいいが、演奏に行った貴族の屋敷でオーストリア皇太子暗殺の密談を盗み聞きしてしまう。その事件に、田舎貴族の婚礼に関わるドタバタ騒ぎがからみ、事はさらにややこしくなり……。
リヒャルト・シュトラウスのオペラ「薔薇の騎士」をベースにした婚礼騒動と、オーストリアの政治状況をうまくからませた上に、狂言廻しに若い音楽家を配し、その世間知らずのために起こる食い違いなどをからめながら複数の事件をうまくまとめあげた小品という趣がある。
著者の歴史と音楽に関する該博な知識をさりげなく使いながら、気軽に楽しめるコミカルなミステリとなっている。たぶん著者は「薔薇の騎士」をいかに料理するか楽しみながら書いたのだろうなと思わせる。もっとも、その部分についてはオペラの設定をほとんどそのまま使用しているので、オペラの好きな人にはストーリーが読めてしまうと思うのだが、そこらあたりは著者も計算済みなのだろう。
これまでの著者の作品とは幾分趣が違うタッチなので、戸惑うファンもいるかもしれない。
(2000年3月29日読了)