日本社会党の結党から「社会民主党」となってその力を失うまでの軌跡を追い、そこから戦後史をあぶり出す。社会党の出発点が戦時中の国家社会主義者を中核とした右翼的なものであったこと、総評の成立以後、マルクス・レーニン主義を中心とした「左派」が主導権を握り、議会民主主義の「右派」との抗争を繰り返してきたその流れを、日米安保条約の変遷にからめてたどる。また、中国やソ連、北朝鮮との関係が変化していくことや戦後の経済発展の中で国民の意識から離れていったというような状況がありながら「社会主義政権の樹立」「非武装中立」などの理想にばかりとらわれて現実を見ず、ひたすら左派と右派の派閥抗争に明け暮れていたことが党勢を衰退させていったことを明らかにしていく。
著者は、本書で社会党の戦後史をたどることにより、万年野党第一党の地位に安住していたことが自由民主党の長期政権を安定させる原因になっていたことを指摘、冷戦の時代に自民党と社会党が米ソの代理戦争を日本国内でやっていたと喝破する。冷戦が終わり、自民党が与党としての求心力を失ったときに、社会党の存在意義もなくなってしまったと断じる。
社会党の歴史を検証することにより、政治における野党の役割というものを考えていくことで、現在の与野党の関係を見抜く一つの視点を与えてくれる。それは政治の本質について問いかける作業でもあるだろう。政党とはどうあるべきかについて多くの示唆を与えてくれる好著である。
(2000年4月7日読了)