読書感想文


困らぬ前のかみだのみ
少年少女退魔録
小林めぐみ著
角川スニーカー文庫
2000年4月1日第1刷
定価495円

 新シリーズの開幕。「極東少年」シリーズに登場していた脇役の少年少女たちを主人公にした独立した短編の連作である。
 「五月少年の不運な日常」では”時占(ときうら)”と名乗る小さな神様を拾ってしまった少年、細川五月が稲荷の使いである狐による放火騒動を解決する。”時占”からお神籤をひけと言われて引いた籤が「貧乏籤」であるというギャグをもとに、日常的に不運な目にあい続ける少年、という設定は面白い。狐も自分の力を強くするためには信仰心を集めなければならないというので、ダイエット飲料の作り方を広めるというアイデアも現代的でユニーク。いろいろなパーツをちりばめ、それを一つにまとめていく。
 「まなみ少女の華麗な休日」では、親にほったらかしにされて死んだ赤ん坊の霊が捨て猫に取り憑き、怪物となる。捨て猫をこっそり飼っていた小学生たちの困惑がうまく描かれている。小学生たちが秘密を共有しあい、それに介入してくる主人公まなみを拒絶するところや、直感は鋭いが思慮が浅いというようなところをきっちりととらえている。そう、小学生ってそうなんだよね。
 いずれも人々に害をなす霊の存在理由などがしっかり書き込まれていて、手堅くまとめられているという感じ。もっとも、私がこの作者に求めるものはそんな手堅さではなく、もっと突き抜けた破天荒さであったりするので、そこらあたりはちょっと不満が残るが。

(2000年4月7日読了)


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