別に私は新人賞を取りたくてこの本を読んだわけではない。実際にこれを読んだからといって新人賞が取れるわけでもなかろう。小説を書くときのキモとはなにか、というものを再確認したかったのだが、一読して賛嘆した。小説を読むときのキモもここには書かれている。というか、エンターテインメント小説のキモが、読む人が読めばどんぴしゃりとわかるように書かれているのであった。
これを読んでそのキモがわからない人はいくらがんばっても新人賞は取れないだろうし、小説を読んだって面白くもなんともないはずである。しかし、本書のようなものを読んで読み巧者が増えれば、私のような木っ端書評家なんぞ不必要になるのではないかと思われる。
つまり小説が好きで書きたくて、できればそれを職業にしたい人はおおいに得るところがあるだろうし、ただ単に「作家」なるものになりたいだけという人は本書を読んでも「作家」になんかなれはしないのだ。そういう本です。
(2000年4月19日読了)