シンガポールの企業で兵器開発をする三田村、彼女の創りあげた二足歩行の戦闘マシンは、彼女が日本人であるという理由で計画を凍結されてしまう。彼女はその計画を他の企業に持ち込むために、デモンストレーションを計画する。実戦に投入するためにはもっと簡単に操作できなくてはならない。彼女に協力する旧ソ連の退役軍人ヴォロシロフは、彼が経営するロシア料理店の常連であるコンピューターゲームソフトの開発者、新田を紹介する。
新田が受けた依頼は、二足歩行ロボットが活躍するゲームソフトの開発。まさかそれが実戦のシミュレーションであるとは知らず、彼とスタッフはソフトを開発する。そのソフトを使用した実戦デモンストレーションが彼らの働く大阪市街で実施されるとは想像もせず……。
異色の近未来戦闘小説。最近、プレイステーション2が軍事利用される可能性があるとしてアメリカへの輸出禁止になるという話題があったけれど、ゲームソフト開発の技術と兵器開発をからませた着想は面白い。大阪市街を二足歩行する兵器が暴れ回るというアクションにも妙なリアリティがあり、一気に読ませる。
新田の「世の中、実は本当に戦争の嫌いな奴っておらんと思うんですわ」というセリフに、本書のテーマは集約されている。主人公の一人、三田村の「死の商人」ぶりが徹底的に描かれているところにもそれが現れている。
(2000年4月23日読了)